2018版 “やさしいSEO”本4冊のやさしさを確認したのでレベル順に紹介
当事務所にウェブサイトの制作や改善をご相談いただく際に、多くのクライアントさまから「SEOのために毎に更新した方がよいのですよね?」とか、「SEOのために、こういうページを作った方がよいと言われたんですが」といったお話をよくいただきます。
その際、私はたいてい次のように回答します。
「SEOのために作るなら、やめましょう。御社のお客様のためになら、ぜひ作りましょう。」
ウェブサイトを作るならSEOは大切、というのは確かなのですが、本当の人間のお客様が最も大切ということを忘れてはいけません。
もうひとつ気になるのは、人から聞いたり、ネット上で見かけた断片的な情報を拾い集めて、焦ったり不安を感じている方が多いということです。
それ自体は正しい情報でも、手順やタイミングを間違えると逆効果になりえます。
もしSEOの基礎知識に自信がないのであれば、いろんなブログ記事を拾い読みするより、まずは本を1冊手元に置いてください。
ブログで拾うだけだと、どうしても初心者向け・中級者向け・上級者向けの情報が入り混じっていて、今見てる記事がどのレベルを想定しているのか判断できず、ステップを飛び越えてハイレベルのことをやってしまい失敗することがあります。
小さな失敗は何度も経験すれば良いのですが、いきなりリカバー不能な失敗は避けなくてはなりません。
スポーツでも、いきなりハードなことをやったら怪我をしますし、最悪命に関わります。それと同じです。
書籍であれば、1冊を通して対象読者が絞り込まれているので、効率よく体系的に学べます。
まずは1冊を信じて、「書いてあることが分かる」だけでなく「実際にやってみて成功体験を得る」まで使い込んでください。
とはいえ、「入門」「やさしい」をうたう本はたくさんあれど、入門書の中でも難易度はバラバラ。(※注1)
1冊目に読む本を間違えると、とたんに挫折してしまいます。
ということで、2018年に私がお客様におすすめするために読んだSEO入門書を、本当にやさしかった順に紹介します。
なお、以下の本を買ってもらうことで、ozone notes への直接の利益はありません。アフィリエイトも貼っていません。ただ、クライアントさまがこれらの本を読んでくださることで、SEOに対する共通の理解のもとサイト制作や運営業務がスムーズに進む、という間接的な利益は期待しています。
1. 『スピードマスター 1時間でわかるSEO対策』
遠藤聡 著 技術評論社 1,000円
全159P B6版 本の厚み約1.1cm
初版発行日 2018年5月15日 Amazon販売ページはこちら
1時間で本当に「わかる」かどうかはさておき、最低限のことが簡潔にまとめられています。
(プロのウェブ制作者にとっては当たり前のことしか書いてありません。)
前書きに「第2章までが必読パートで1時間分」との記載があるのですが、まさにその通り。
SEOやウェブサイト運営をしていると必ず耳にする言葉の意味を正しく理解するのに役立ちます。
本当に何も知らないという場合は、まずこの本で「正しい考え方」を知り、雑念、雑音を取り払うことをおすすめします。
コンパクトで持ち歩きにも困らないサイズなので、お守りがわりにカバンにいれておいてもよいかも。
当事務所へご相談いただくすべてのお客様に一読いただけると、私が口頭で説明する手間が省けてとても助かりますねー。
他の制作会社にご依頼をされる場合も、2章までに出てくる言葉をしっかり理解しておくと、スムーズに発注ができると思います。
第3・4章が「プラスα」になっているのですが、個人的には第4章も必読で、第3章より先に読んでも良いと思いました。
第3章に書かれている実作業は、制作会社に依頼する場合は必ずしも自分でやる必要はない(やる場合は制作会社に確認をとったり、指導を受けてからやるべき)のですが、知識として知っておく価値はあります。
一言でまとめると、ウェブサイトの発注先とスムーズに話ができるようになるための本、です。
2.『10年つかえるSEOの基本』
土居健太郎 著 技術評論社 1,480円
全134P A5版 本の厚み約1cm
初版発行日 2015年5月25日 Amazon販売ページはこちら
「10年つかえる」と謳っていて、10年後どうなっているかが楽しみですが、今3年目。まだちゃんと使えます。
対象レベルは1. とほぼ同じです。
違いとして、文章が会話形式なのでとっつきやすい印象ですが、好みもあると思います。
内容的に重なる部分も多いので、1と2のどちらかを選べばよいでしょう。
個人的に、索引がないのだけが残念…。
1も2も、テクニックを知りたい方には物足りなく感じるかもしれませんが、この本の内容を納得せずに行動しても多分うまくいきません。
諭されるつもりでちゃんと読みましょう。
3. 『いちばんやさしい SEO入門教室』
株式会社グリーゼ ふくだたみこ 著 ソーテック社 1,850円
全255P B5変形版(182mm x 231mm) 本の厚み 約2cm
初版発行日 2017年12月31日 Amazon販売ページはこちら
先の2冊に比べて、サイト制作時の具体的なセオリー、手法が多く紹介されています。
大判でページ数も多いので、情報は詰まってますが持ち歩くのはちょっと大変。
よくまとまった本ですが、「いちばんやさしい」という言葉には注意が必要です。
どちらかというと、専属のウェブ担さんやある程度サイト運営経験のある方、もしくは制作会社の新人スタッフさん、あとはプロブロガーやアフィリエイターなど、自分でサイトを作る人向けの内容でした。
一方で、サイト以外に通常業務をこなさないといけない社長さん、個人事業者さんがこの本の内容をいきなり一人でやるのは難しいと思います。
まったく知識のない状態で漠然とこの本を読むと、あまりにやることが多すぎて、大変な印象を受けてしまうかもしれません。
この本の内容の半分以上(4章まで)は、サイト作成前に考えるべきことです。
新規サイト作成やフルリニューアルの検討時、制作会社の選定や発注の前に読むのをおすすめします。
一緒にこの本を見ながらサイトの設計やコンテンツを具体的に提案してくれる制作会社なら、きっとよいパートナーとなってくれるでしょう。
私も、自分のサイトプランニング業務を見直すよいきっかけになりました。制作時のチェックリスト的に使えそうです。(※注2)
第5〜7章は制作後、運用フェーズの話になります。
リンク対策や分析など、重要そうなワードが並んでいます。一見実践的な内容ですが、細かい説明はないので要注意。
広く浅くさらりと扱われていますので、読む際もさらりと確認して、具体的なテクニックや手法はもう少し専門的な書籍で補う必要があります。
4.『いちばんやさしい新しいSEOの教本 : 人気講師が教える検索に強いサイトの作り方』
安川洋、江沢真紀、村山佑介 著 インプレスジャパン社 1,706円
全239P B5変形版(182mm x 231mm) 本の厚み 約2cm
初版発行日 2014年2月21日 Amazon販売ページはこちら
※MFI対応の第2版が発売されてました。これから購入するなら第2版を。
本のサイズもA5版に変わっていました。初版は結構かさばったのでこのサイズ変更はありがたいです。
全255P A5版 本の厚み 約2cm
第2版発行日 2018年7月21日 Amazon販売ページはこちら
右が初版、左が第2版です。
この本も「いちばんやさしい」に惑わされてはいけません。
この本を活用するには、ある程度実務経験はありつつも体系的に学んだことがなかったり、自己流のサイト運営で行き詰まったりなど、一定の土台がある状況が望ましいです。
それと、「サイトの作りをこうすべき」というセオリーは紹介されているものの、技術的にどうすればそれが実装できるかまではさすがに書いていないので、この本に記載のことをすべてきっちりやるには、テクニカル面は制作会社等と協力をしながらサイト制作や改善を進めていく、もしくは自社で制作スキルを持っている必要があります。
土台のある人にとっては、本当に良書です。
制作者目線では、初版4章(第2版だと3章)の業種別サイト構成のアドバイス、5章(第2版だと4章)の内部対策の内容が特に参考になりました。
正直、セオリーとして理解はしていても、この本の内容をすべてきっちりやり尽くせている人、会社さんはなかなかいないと思います。
つまりこの本の内容をちゃんと実践し続けていけば、それだけで他社より先に行ける可能性が高いです。
番外: Google Search Console ヘルプ
上記のどの本でも、Googleが出している情報を一読すべきと記載されています。
そりゃそうです。学校の勉強でも、ドリルだけじゃなく結局教科書がいちばん大事だったりするものです。
とはいえ初見だと読みづらいかもしれません。
書籍を一読して理解を深めたら、書いてあることもよくわかるようになっていると思いますので、是非読みましょう。
補足: 読んでから作る?作ってから読む?
SEOの本を読むなら、ぜひサイトを作る前、改修する前、制作会社に発注する前をおすすめします。
順番が逆になっている方が多くて、ガチガチに作ってしまってからさあどうしよう、とこちらにご相談をいただくこともありますが、その段階でせっかく作ったサイトに大きく手を入れる必要があっても既に手遅れ予算が出ない、ということはウェブ屋あるあるです。
発注側と制作チーム皆で最初に本を1冊決めて、読み合わせを行ってから制作をスタートする、というのも面白いんじゃないでしょうか。
個人的に、クライアントさんと同じ本を開きながらプロジェクトを進めたという経験はまだないのですが、そういうのぜひやりたいですね。よいプロジェクトになりそう。
補足その2: 「実際にやってみて成功体験を得る」ことの重要性
以前、私のSEOについての考え方や、一般的なSEOのセオリーをとあるクライアントさまにお伝えした後、こう言われたことがあります。
「言ってることはわかるんだけど、SEOにお金を使ってないと不安なんだよね」
その時の私は「身も蓋もないなぁ…」と思ったのですが…
この不安は理屈ではなく気持ちの問題なのですが、同じような不安を抱えている方も多いことでしょう。
今から思うと、こういった不安は基礎知識の不足だけでなく、「成功体験がない」のが原因でした。
この不安を取り除いて正しいレールに乗せるには、小さな成功体験を繰り返し体感してもらう必要があったなと、今になって思います。
ブログやCMSが当たり前となった今。とくにスモールビジネスだと日常の更新は自分でやるという場合が多いと思いますが、「自分の書いた記事やページが読んでもらえた」という反応を得られるのがまずは最初の成功体験です。(SNSもしかり)
書いた→書いた→書いた→(忍耐)→読まれた!→書いた→また読まれた!→→(継続)→→業務に活きた!!
って感じで。
でも、たいていの方は「業務に活きた!!」はおろか、(忍耐)の先にある「読まれた!」を味わう前に挫折してしまいます。
この時期を乗り越えられるかどうかで大きな差がつきます。
この忍耐の時期を乗り越えるパートナーとしての役割、例えばサイト運営のどこかに、サイトオーナーさんのモチベーションになるような仕掛けを用意してあげるようなことが、我々プロのウェブ制作者に求められているのだろうなあと、最近強く思うのです。
どんな仕掛けがそのクライアントさんにハマるか、それはなかなか難しく、模索中ではあるのですが…
※注1
技術書のタイトルは著者ではなく出版社が付ける場合が多いと思います。執筆オファーの段階で先にタイトルが決まっていることも結構あるはず。特に、既存のシリーズがある場合。
なので著者が必ずしも世界一だと思って書いているとは限りません。悪気はないのですよ。
出版社さん。専門書籍タイトルの「とってもかんたん」「いちばんやさしい」「世界一〜」の濫用はそろそろやめませんかねー。
※注2
ただ1点、個人的にWordPressを安易に勧めている部分だけはどうかなーと思いました。いや、分かるのですが、入門書でSEOに強いテーマを選びましょうといっても、それはちょっと無責任では…。